薫の野郎猫的日常
2016年07月08日 (金) | 編集 |
この資料は医療従事者サイドからご家族への対応の仕方について書かれていますが、私は反対に、家族がよくこのことに関して勉強し、医療従事者より先に、積極的に、人間だけじゃなく尻尾家族の終末期に係わって行ってほしいし、関わっていきたいと考えている者です。

★拙ブログ「なにごとも先手」
http://yaroneko.blog55.fc2.com/blog-entry-1907.html
を参照ください。

では、以上のことを踏まえた上でお読みください。

★患者コミュニケーションソースブック    
「ターミナルケア、在宅ケア」
DNAR、延命治療の中止      
三瀬村国民健康保険診療所 白浜雅司 

(はじめに) 

 今回ターミナルケア、在宅ケア項目の一つとして、DN(A)R:Do Not (Attempt) Resuscitateと延命治療の中止という項目をあげることにした。このような生命を短くするようなガイドライン作りはふさわしくないという法律家からの批判もあるようだが1)、日本の医師の調査でも、DNRオーダーの必要性があると考える医師が90%、DNRオーダーに従って心肺蘇生を行わなかった医師が60%あるが、DNRに患者の同意が必要と考えているものは14%にすぎないという報告がある2)。一般国民の調査でも70~80%が不治で苦痛のある病気の場合には延命治療を望まないと回答しているが、医師から延命治療についての話があったのは12%にすぎいないという3)。さらに、いくつかの安楽死事件と呼ばれる事件が発生している現状では、DNRや延命治療の中止というようことを考える場合、医師として知っておくべきこと、患者・家族と話し合うべきことを整理しておくことは、必要だと考えたからである。将来このような問題について日本でも学会などのレベルで、ある程度のガイドラインを提示されるべきだと思うし、そのためのひとつのたたき台を提示できれば幸いである。 
 なお、最近欧米で、DNR:Do Not Resuscitationよりも、DNAR:Do Not Attempt Resuscitationという言葉を用いる傾向がある。DNRという言葉では蘇生する可能性が高いのに、治療するなというイメージが強いのに対して、DNARは蘇生の可能性はもともと低いので、蘇生を試みることを控えるという意味を込めて用いられており4)、この項でもDNARを用いることにする。 

(医師が予備知識として知っておくべきこと) 

1) DNAR指示とは何か 
 通常、突然患者の心臓がとまったり、呼吸がとまったりした場合には、そばにいる医療スタッフはただちに心肺蘇生をするように訓練を受けている。しかし、いかなる治療にも反応しない不治の進行性病変で、死が目前に迫っている患者に対しては、患者が心停止に陥った時、心肺蘇生を行わないことを前もって指示しておくことができ、その指示をDNAR orderと呼んでいる。 
ただし、実際はいかなる段階から治療に反応しないとか、死が目前に迫っているというのかという判断は難しいことも多い。少なくとも現在の日本における標準的な治療がきちんとなされた上で判断することが求められる。  
2) 延命治療の中止とは何か 
 延命治療の中止には、人工呼吸器の停止、持続点滴の中止、チューブによる栄養補給の中止、水分投与の中止など様々な延命治療の中止がある。人工呼吸はやめてほしいが、チューブによる水分の補給は続けてほしいというような様々な患者・家族の希望があるので家族と相談しながら決めていくことになる。 
3)DNAR、延命治療の中止を考慮する場合 
 (1) 患者・家族からの要請(近年別項で述べられる事前指示書(高林論文参照)において患者・家族が自分の意志で終末期の治療方針を希望されていることがあり、それを元に医療者とその後の方針を検討することになる) 
 (2) 医療者が、1)医学的に進行性疾患の末期で、いつ心肺停止の状況がおきてもおかしくないと思われる、2)痛みの治療など現在できる緩和的な治療を行っても患者の苦痛が強い、3)心肺蘇生をしても治療の効果がほとんど期待できない、あるいは蘇生した後のQOLが現状以上に辛いものが予測されるなどの条件がそろった場合、医療者からDNARや延命治療の中止を治療選択肢の一つとして提示することになる。ただしこの判断は偏見が入らぬように、複数の医師、医療スタッフの相談で決めることが必要である。 
4) WithholdとWithdrawの問題 
 一般に日本の医療現場では、治療しないこと(たとえばDNAR)Withholdは許されるが、一度はじめた治療を途中でやめることWithholdは許されないという意見が強い。例えばALSの患者さんに人工呼吸器の装着を考える場合に、一度つけるとはずすことはできませんからよく考えて決めて下さいと確認されることがある。このことについてある医学生から、1ヶ月間つけてみてどうしてもその状態で苦痛があれば止めることができるような「人工呼吸お試しコース」と言うことはできないのでしょうか。という質問を受けたことがある。患者自身にしかわからない、そして体験しなければわからないことを言い当てた鋭い指摘であったと思う。また、くも膜下出血で、意識の失った患者が事前指示書を書かれており、手術をすることなく亡くなられたのは本当によかったのかという看護師からの問いかけが新聞で取り上げられた。確かに自分が何か手を下すことで人が死に至ることと、何もせずに人が死に至ることで医療者の精神的な負担は違うことや、延命治療の中止についてわが国でははっきりとした法的な見解が示されていことなど難しい問題もあるが、もしWithholdだけでなく、Withdrawを認めなければ、医療の恩恵にあずかるチャンスさえ奪うことになり、日本でも期限付きで治療を行ってみて、その結果患者が治療継続を望まない場合、延命治療中止を考えられるような体制を整備する必要があるように思う。 
5) 代理決定 
 本人の意識があり判断能力がある場合には、当然本人の意向を最大限に尊重して決めていくことになるが、本人の意識がない場合、判断能力が低下してきた場合には、代理決定が必要となる。この場合も、事前に患者本人が自分の意識がなくなった誰に代理決定をおねがいしたいという患者の意向が優先されるが、それがない場合は、残された家族の中で、患者の近親者で具体的に患者の生活に関わっていた方の意見が優先されることになる。この代理人の見きわめが実際は難しいが、少なくともその方の配偶者、両親子どもかなど、近くにいて患者の普段の判断過程がわかる方が中心になって代行判断してもらうことになる。最終的に誰か一人に押し付けるのでなく、医療スタッフを含めて患者に関わる人が一緒に患者の最善の利益になるように決めていくと言う形が望ましいであろう。 

(患者さん、患者家族に説明する時に気をつけること) 

1) DNARや延命治療の中止について話すことを避けない 
 医師の中には、このようなことを患者・家族と話すことは、治療のの希望を失わせることにつながると心配われる方も多いが、患者はそのような末期の延命治療についても医師を話したいと希望する方が多いことがわかっている。少なくとも患者から延命治療などについて相談を受けた時にはきちんと応対したい。 
2) DNARだけ、延命治療の中止だけでなく診断治療全体の一部として話す 
 他の悪い知らせを伝えることと同様に、患者・家族の受け入れ状況、特に不安の感情に配慮しながら徐々に伝えていくことになる。かなり厳しい(末期の)状況で、完治は難しく、今後徐々に痛みなどの苦痛が増えていく可能性があること。しかし最善の治療(積極的根治医療はできなくても、適切な緩和治療(岡田論文参照))を行い、症状を少しでも楽にするように努力することを伝える。多くの患者・家族は、DNAR指示や延命治療中止の指示が出ると、何の治療もされず放置されることをおそれている。日常的なケアは、これまでとかわらず、提供されることを伝える。 
3) 心肺蘇生や延命治療のメリットとデメリットを話す 
 心肺蘇生の成功率は基礎疾患によって色々な報告があり、その情報を元に話すことになるが、一般的に病院内での心停止呼吸停止の蘇生後退院できる率は14%程度といわれており、転移性腫瘍、敗血症などの患者では心肺蘇生しても蘇生は難しいという報告がある。また呼吸停止になれば、気管内挿管をしたあと人工呼吸器にずっとつながれることになることなどを話す。テレビなどの影響で、心肺蘇生をすれば元気に退院できるような過剰な期待を持たれていることも多い5)。 
4) 患者・家族の間、あるいは医療スタッフの間で意見が分かれた場合の対応 
 終末期医療、延命治療については、様々な考え方があり、すぐには、関係するものの意見が一致しない場合もあるので、結論を急がないこと。何回かの話し合いで妥協点が見つかることもあるし、本人の病気の進行に合わせて関わる人の考え方も変わるからである。欧米のように患者の自己決定だけを最優先するやり方は、特に患者の死後に残された家族に心の傷を残すことがあるので注意したい。 

(患者・家族説明用のひながた) 

<今後の患者さんの治療についての説明とご確認いただきたいこと> 
1) 現在の状況
2) 今後予測されること

3) 今後の考えられる治療法それぞれの長所と欠点、効果

4) 患者・家族の希望

 担当医より病気や治療についての説明を受け、理解した上で、上記のような治療を望みます。 
 ただしこの確認内容は状況の変化に応じていつでも再度話し合って変更できるものとしてください。

年  月  日  
患者氏名(                   )連絡先(     ) 
(患者代理人        患者との続柄(   )連絡先(     ) 
同席者           患者との続柄(   )連絡先(     ) 
担当医(       科)氏名(        )連絡先(     )  
指導医(       科)氏名(        )連絡先(     )  
同席看護師(     科)氏名(        )連絡先(     ) 
診療責任者(     科)氏名(        )連絡先(     ) 

<今後の患者さんの治療についての説明とご確認いただきたいこと>の使い方 

 これは検査の説明書のように、書類を渡して読んでもらうものではなく、こちらがそれぞれの項目(必要に応じて何回かに分けて)について話した上で、患者・家族が理解されたことを書き入れていていただいて、理解が不十分であれば、さらに話し合って完成するというようなものと考えていただきたい。ケースによって話しあう内容が違ってくるので大枠だけで、統一的なひながたは提示できない。患者・家族からの質問を受け、不安な感情をも含めて話し合いができることが一番大事で、この用紙はそのための道具くらいに考えてほしい。 
 もし患者・家族が記入するのが難しければ、こちらが説明したことを家族に見せながら記入していき、話し合って確認していただいたことに基づいて、医療スタッフが対応できるように、残しておいていいですかという形で納得してもらってサインしてもらってコピーを渡せばいいと思う。 
 それぞれの項目で話す内容としては、 
1) 現在の状況(現在わかる範囲の病気の説明。非常に厳しい状況であることを話す。) 
2) 今後予測されること(突然の呼吸停止、心停止がおきうることも含める。予後について明言することは難しいが、急に悪くなることもあるので、大切なことは2週間くらいでやっておいた方がいいですというように話す) 
3) 今後の考えられる治療法それぞれの長所と欠点、効果(考えられる積極的な治療と、緩和的な治療のメリットデメリットを話す。積極的治療と緩和的治療が混在することもある。この中に心肺蘇生のメリット、デメリット、効果予測などを含める。) 
4)患者・家族の希望 
 (この中に、以下の○のようなDNARや、延命治療中止の内容について、書き残してもらうやり方が一番いいいように思われる。) 
○突然の呼吸停止、心停止が来た時は心肺蘇生をしないでください 
(家族や患者の特別な希望があれば、例外的に、心マッサージだけはして下さい。というような表現があってもいいと思う) 
○自分にとって苦しみを増すような過剰な延命治療はしないでください 
(患者がどのようなことを希望するか、過剰な経管栄養も、点滴もしないでくださいということを希望されるのか、すべてを先にというより、具体的に新たな治療の必要がもにされたいか話し合った上で記入してもらう) 
○苦痛をとるような治療は積極的にして下さい 
(心肺蘇生をしないこと、延命治療の中止が、患者の治療の中止とうネガティブなことだけでなく、積極的に緩和ケアは続けていくことを確認するために) 
5)上記の確認内容は状況の変化に応じていつでも変更できます。 
(病状や患者・家族の気持ちの変化があればいつでも変更されてかまわない。) 
6)署名欄には、あえて多くの関係者の記入欄をあげた。非常に微妙な決断を含む問題なので、患者(意識がなければ代理決定者)と担当医だけでなく、指導医、家族などの同席者、看護師、そして同席できなくても、診療責任者である診療グループの長などのサインをもらっておくことは、医療スタッフ全員がかかわり周知しておくことが必要であり、何人かの共同サインが残っていることが望ましいと考えた。 
 またこの内容については常に医療スタッフの間で確認できるように(通常その中にいない当直医にもわかるように)カルテや指示簿などのわかりやすいところに以下のような確認事項のポイントが記入され、一週間に一度位の割合で、定期的に確認されておくことが必要であろう。 
1) 現在の病状(肺癌ステージ4、全身骨転移がある末期状態など) 
2) 治療法の確認(化学療法の効果なく癌在モルヒネを中心とした痛みのコントロールなど) 
3) 患者の意向(心肺蘇生は望まないとか、心マッサージだけは望むなどできるだけ具体的に) 
4) 最初のオーダーが出された後の変更はないのか 

参考文献 
1) 新井達潤:DNR指示のガイドライン、日本医事新報3715号43-46、1995 
2) Takashi Hosaka, Ichiro Kobayashi, Tuyoshi Miyamoto et al. Physiciansユ perspective on メdo-not-resuscitateモ(DNR) orders. Int J Clini Oncol (1999)4:138-141 
3) 厚生省健康政策局総務課監修:21世紀の末期医療。中央法規出版、2000 
4) Charles Junkerman,M.D. David Schiedmermayer,M.D.: Practical Ethics For Students, Interns, and Residents A Short Refernce Manual. University Publishing Grop 1994. 
5) Bernard Lo: Resolving Ethical Dilemma A Guide for Clinicians.6th Edition. Lippincott , Williams&Willkins,  2000. 
6) 救急治療中止は尊厳死? 現場で「リビングウイル」提示されて 朝日新聞2002年7月11日くらし欄記事 
  
  
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